
12月1日に公開される劇場版「空の境界」が盛り上がっていない。
前売り券はすべて完売したし、映像の出来もよいようなのだが、
新たなファンをひきつけるような「これはすごい!」的なムーブメントにはなっていない。
単館上映・全七章を順次公開という手法は限られた奈須マニアにDVDを売るには
いいかもしれないがそれ以上の発展はあるのだろうか?
もともとむずかしい小説である。
タイプムーンを率いる奈須きのこが同人時代に書き上げ、
その後講談社から一般向けの小説として販売されたが
私の周りの評価は「すごいと思うけど好きではない」という声が大部分だ。
月姫やFateのようなキャラクターと物語が互いに作用してブレイクする作品ではない。
もともとこの企画は奈須きのこの担当編集とも言うべき講談社の太田克史氏が立ち上げ、
タイプムーンを口説き落として実現したものである。
アキバBlogに掲載された奈須きのこのインタビューを読むと、
本人も「無謀ともいいます(笑)」 と言っている。
この作品が映画としては失敗に終わるのではないかという理由をいくつか挙げてみよう
●
時系列がバラバラなため、7話を通して見ないと全貌が把握しにくい自分のペースで読める小説版ですらそうなのだから、映画ではさらにそれが際立つだろう。
●
全体に散文的な構成なため、王道ストーリーにあるようなクライマックスに欠ける小事件の積み上げでストーリーが進んでいくため映画で初めて接した観客は
どこを目的に見ていいのか戸惑うのではないか。
●
主人公がアルクやセイバーに比してあまり魅力的ではないタイプムーンの強みは魅力的なキャラクターメイキングにあると思うのだが、
両儀式というヒロインには「好きだ」といえる部分を見つけにくい。
ましてや武内崇の手助けがあまり得られない映像ではなおさらに。
思うにこの企画自体が講談社の奈須きのこの将来の作品を確保するという
一種の囲い込み戦略であるような気もする。
もともとファンサービス精神を持ち合わせているタイプムーンだが、
講談社の祭り上げで妙な文芸路線に走って、信者だけのものに
なってしまうのではないかという危惧を捨て去ることが出来ない。
ただでさえ読者を選ぶ小説が映画になって、さらにファンを選別してしまうのではないか。
文芸界では「村上龍原作の映画はヒットしない」という法則がある。
「タイプムーン原作のアニメはつまらない」という流れが出来ないことを望む。
【関連】
■
劇場版「空の境界」公式サイト■
奈須きのこ氏に訊く「劇場版 空の境界」インタビュー:前編(
アキバblog)
■
初めて読む「空の境界」